「3たま」の魅力

音楽
左上から時計回りに、知久 寿焼(ちく としあき)、石川 浩司(いしかわ こうじ)、
滝本 晃司(たきもと こうじ)。敬称略。

以前、『「たま」という奇跡のバンド』という記事を書かせていただきました。

4人編成の「4たま」のエピソード、曲を中心に紹介しています。

今回は、メンバーの一人である柳原さん脱退後の、知久さん、滝本さん、石川さんの

3人+サポートメンバーによる編成、「3たま」の魅力について語っていこうと思います。

「3たま」になって何が変わったのか?

柳原さんという、「たま」において音楽面、パフォーマンス面で大きな役割を果たしていた

要のメンバーが抜けたことで、「たま」は一体どういう変化をしたのでしょうか。

結論から言うと、何も変わっていません。


柳原さんがメインで作詞・作曲をし、ボーカルを務めた曲をライブで演奏しなくなった。

柳原さんの楽器担当、主に鍵盤楽器のパートをサポートメンバーに任せるようになった。


それ以外は大きな変動もなく、今まで通り自分たちが好きな、自分たちがいいと思う

音楽をやり続けていきます。


音に対するこだわりや姿勢も次々と模索していきます。

電子音を前面に出したスタイリッシュな音作りをしているかと思ったら、

アコースティック中心で、トイ楽器を使った、シンプルで親しみやすい音にシフトしていきます。

その変化が楽しめるのが、「3たま」の大きな魅力です。

「3たま」のこの曲が好きすぎる!

ここでは、「3たま」活動後にリリースされたアルバム、ミニアルバム、マキシシングルの中から、

独断と偏見で僕の好きな曲をそれぞれメンバーごとに選んでみました。


ちなみに『学習』と『ゆめみているよ』のマキシシングルは長らく廃盤となっていましたが、

2016年に一緒になってミニアルバム『学習 / ゆめみているよ』として再リリースしています。

う〜ん…。

なんか、この中から選曲するのは、「4たま」に勝るとも劣らない難しさがありますね。

「3たま」の曲は複数のメディアにまたがって収録されているものも多く、

楽器編成が異なるバージョンを持つ曲もいくつかあります。

バージョン違いでも、それぞれの良さがあり…。

音楽って、ホント奥深いですね。

知久さんのこの曲が好き!

4位 学習 【収録:『東京フルーツ』『学習 / ゆめみているよ』】

1998年の4月22日にリリースされた、柳原さんのソロ3作目のシングル『きみを気にしてる』は、

自分が脱退した後の「3たま」に向けての、惜別の念とエールを込めたメッセージのような

内容になっています。


これに呼応するかのように、同年12月25日にリリースされたのが、

「たま」通算12作目のシングル『学習』です。


過去のわだかまり、相手の気持ちなんて、考えれば考えるほどわからなくなる。

考えて気にすればするほど、ただ自分が苦しい思いをするだけ。

それならいっそ、相手を許して自分をこれ以上苦しめるのはよそう。


そんな知久さんの想いが形になったのが、この曲ではないかと思っています。

3位 電車かもしれない 【収録:『汽車には誰も乗っていない』『しょぼたま2』】

知久さんお得意のさみしさと、独特の得体の知れなさを併せ持った曲です。


物理学や数学といった理論や論理的推論、物理的性質といった現代のものの見方、考え方、

枠組みからはみ出した、物質的には存在しないけど心霊的に存在している「ぼくら」。

その僕らを乗せて走る「電車」。


「ぼくら」と「電車」は、そんな現代の常識の片隅に追いやられたモノたちを

象徴しているようにも思えます。

石川さんの『カニバル』を知久さん風に表現したような感じがする曲ですね。


イラストレーター、漫画家の近藤聡乃(こんどう あきの)さんが作成したアニメが、

また微妙にマッチしてクセになります。

2位 月のひざし 【収録:『しょぼたま』】

『夢の中の君』同様、夢の中で会う「誰か」とずっと一緒にいたいという

強い想いを歌っています。


他にも、『ゆめみているよ』という、やはり夢が主題となっている曲があります。

『ゆめみているよ』は、誰かと一緒に眠っても一緒の夢を見ることはできないという、

孤独感とさみしさを歌っているように思えます。


それに対して、『月のひざし』では、夢の中で出会ったいい人とは、

一度目が覚めると忘れてしまうし、次に夢を見てももう二度と出会えない、

だから、夢の中で会ういい人と会う時間、その瞬間を大切にしたいという、

一期一会な想いを歌っているのでしょうか。


それにしても、知久さんの「地味なテンポのさみしい歌」は、音の少ないシンプルな

構成にもよく合いますね。

1位 ぎが 【収録:『しょぼたま』『いなくていい人』】

聴くたびに情景が目に浮かび、思わず目頭が熱くなる曲です。


アルバム『犬の約束』に収録されている『ねむけざましのうた』と同様、

犬を飼った経験がある人にとっては、琴線に触れる内容ではないでしょうか。


アルバム『いなくていい人』と『しょぼたま』で、それぞれバージョン違いが

収録されていますが、僕は断然、『しょぼたま』派です。

「たま」は間奏が素晴らしいことでも有名ですが、その間奏で使用される鈴の音が、

クリスマスの夜に天に召される雰囲気を出していて、グッときます。


最後の一節も、言葉にならない感情と想いを表しているようで好きです。

滝本さんのこの曲が好き!

4位 パルテノン銀座通り 【収録:『パルテノン銀座通り』】

僕も大好きな漫画家の吉田戦車さんとのコラボにより誕生した、

漫画『ぷりぷり県』のイメージアルバムから代表曲です。


エフェクトの効いたサウンドは、ビートルズの『BEING FOR THE BENEFIT OF MR. KITE!』や

『All You Need Is Love』を彷彿とさせます。

また、「ぶっこわれた笑い方を楽しみ」というフレーズがどうにも強烈で、耳に残ります。


何気ない日常を一緒に楽しもうという、前向きなメッセージを滝本さん風に表現した、

とても元気が出る曲です。

3位 まばたき 【収録:『汽車には誰も乗っていない』】

この曲はもうね、全てがカッコいいいんですよ!

歌詞もメロディーも、間奏の知久さんのギターソロも、サビのコーラスも、

サポートメンバー斎藤さんのアコーディオンも!


「たま」というバンドでないと、絶対にこの曲は作れないし、演奏できないと思います。

「3たま」時代に、この曲をライブでリアルタイムに聴けた人は幸せですね。

2位 ハダシの足音 【収録:『東京フルーツ』】

滝本さんがピアノを弾き、知久さんのハーモニカとサポートメンバー斎藤さんのアコーディオンが

絡み合う、メルヘンチックで楽しい曲です。


滝本さんにしては珍しい世界観で、どことなく柳原さんぽい感じがしなくもないです。

なんか、あの「4たま」の頃の雰囲気が感じられて、嬉しくなって何度も聴いてしまいます。

1位 ハル 【収録:『しょぼたま』】

原詩は江藤 莅夏(えとう りか)さんという方で、名古屋の詩人だそうです。

この原詩に滝本さんが手を加えて素敵な曲に仕上がっています。


散っていく桜の花びらに、物事の終焉や存在のあやふやさを重ね合わせた、

滝本さんらしさが感じられる、美しくて切ない内容です。

シンプルなサウンドが、より曲の世界観を引き立てています。

石川さんのこの曲が好き!

4位 お肌ツルツル老人 【収録:『学習 / 夢見ているよ』】

自分がイヤだと思うものを並べて力強く歌う、石川さんらしいコミックソングです。


聴いていて、

「う〜ん、確かに嫌だな…」

「これ、やったことあるな!」

「んなことあるか!」

「カフカかよ!」

など、いろいろツッコミたくなること、請け合いです。

3位 ガウディさん 【収録:『しょぼたま』】

4たま時代のアルバム『犬の約束』に収録されていたものですが、トイ楽器中心のシンプルな

音楽で、後奏部分を少し長くした構成になっています。


「ひどい雨が突然落ちてきて」、「みんなカラフルな傘をさした」とは、いったい何のことを

言っているのか、短い歌詞ながらもいろいろ想像力が膨らみます。

「黄色い戦車」、「ドイツのコイン」というキーワードが示すように、

「ティーガー」戦車が登場する珍しい内容となっています。

2位 汽車には誰も乗っていない 【収録:『汽車には誰も乗っていない』】

「たま」では数少ない、石川さんの「正統派」な曲です。


笑無し、笑顔なし、パフォーマンス無しの、とことん石川色を排除して真面目でストイックに、

純粋に、歌詞、曲、歌唱で聴かせてくれます。


ライブでも、パーカッションの手を動かすだけで、ほぼ直立不動でノーマルに音楽している

石川さんがもの凄くカッコよく見えます。

YouTubeに動画がアップされてますが、2017年に吉祥寺のライブハウス「MANDA-LA2」では、

エレキギターによる弾き語り演奏をしていて、これもまたカッコいいです。

1位 デキソコナイの行進 【収録:『たま』】

一聴してみて、あのプログレッシヴでパフォーマンス重視の石川さんにしては、

やけに大人しくてかわいらしい曲だな、という印象でした。

しかし、歌詞に注目してみると、明らかに「たま」のことを遠回しに

(「たま」の曲にしてはストレートな方)歌っているように聴こえます。


どんなに結束の固い集団でも、どんなに優秀なバンドでも、必ずいつかは解散、

もしくは活動停止になるものです。

1984年から19年にわたって活動してきた「たま」も、その例外ではありませんでした。

柳原さん脱退後の「3たま」として初めてリリースされたアルバム『たま』には、

すでにこの曲が収録されています。


みんなの歩調のズレがこれ以上大きくならないうちに何とかしたい、そういう石川さんの

想いが、曲として結実したのかも知れません。

「3たま」をもっと知りたい!

柳原さんが脱退して活動規模が縮小したように思いがちですが、「3たま」はそれまで通り、

レコーディングやライブでの活動を続けていました。

九州、京都、大阪など、日本各地でロケをしたり、果てはネパールへ演奏旅行に行ったりと、

その活動の幅はむしろ広がっていました。

そんな「3たま」の活躍は、ネットで検索すれば簡単に、ブログやYouTube動画などで

窺い知ることができますので、いろいろ探してみてください。


以下は、僕がオススメの「3たま」DVDです。

まだご覧になっていない方は、ぜひ手に取ってみてください。

しょぼたま

九州、京都、大阪、東京など、全国9ヵ所で行ったロケの中から、

10曲が収録されています。

簡素な楽器でマイクを使わない演奏なのに、最後まで飽きずに聴けます。

「たま」とはつくづくすごいバンドだなと思います。

車を運転しながら歌う滝本さんの『サーカスの日』は必見です。

たま ネパールへ行く

2000年3月に行われた、ネパールでの演奏旅行を編集してまとめたものです。

ネパールの様々な町角で、しょぼたま同様の簡素な楽器とマイク無しの演奏を繰り広げます。

日本語歌詞がわからないのに、現地の人は楽しそうに聴いています。

歌詞の力を借りずとも、演奏力やパフォーマンスで観客を楽しませることができる「たま」の

すごさが実感できます。

たまの最期!!

東京は吉祥寺、STAR PINE’S CAFEにて、2003年10月28日、30日、31日の3日間

行われた解散ライブを収録しています。

やはり見どころは31日、ホフディランのワタナベイビーさんが飛び入り参加するところですね!

何度見ても涙が出ます😢

最後に イラストレーター羊子さんの紹介

今回も、イラストレーターの羊子さんのイラストをお借りしました。

記事に掲載しなかった他のイラストも本当に素敵なものばかりでした。

羊子さんには、ぜひ今後も何かの機会に「たま」のイラストを描いていただきたいです。

本当にありがとうございました。


羊子さんのSNSは、以下になります。

羊子
pixiv
羊子 / yoko (@yoko_0013) • Instagram photos and videos
262 Followers, 172 Following, 73 Posts - See Instagram photos and videos from 羊子 / yoko (@yoko_0013)

コメント

  1. ゲイブリエル より:

    たまに関する記事、興味深く拝見しました。
    本八幡ビーフラットというライブ・バーで定期的に「たま」好きが集まりセッション会が開催されております。
    https://www.b-fla.net/
    たまファン、潜在的にはたくさんいらっしゃるような気がします。
    興味のある方は是非一度遊びに来て下さい!どなたでも歓迎です。
    直近次回は2023年8月8日(火)19時からです。(現在、月1ペースで開催中)

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