なんて呼んでほしい?

コロブン


妻と結婚して今年で10年になりました。

世間一般で言う錫婚式というやつですね。

いやあ、あっと言う間の10年です。


僕と妻との年齢差は15歳。

妻の方が年上になります。

いわゆる姉さん女房というやつです。


妻とは出会ってから4年で結婚してますが、

それまでまあ色々ありました。

年が離れているのもあり、出会って間もない頃は、

妻のことを「○○さん」とかなり他人行儀に呼んでいました。


「なんて呼んでほしい?」


いつまでも他人行儀なのもどうなのかと思い、

思い切って訊いてみました。


当時の妻は、一瞬考え込んだ後、予期しない言葉を発しました。


「オヤブン!」


瞬間、自分の頭の周りに大量のクエスチョンマークが飛び交いました。


オヤブン?

親分?

山賊とか、海賊とか、893の出てくるお話でしか聞いたことがない、

あの親分?


「えっと…なんでまた親分なの?」

「ギンちゃんの親分だから親分!」


もう訳がわかりません。


ギンちゃんというのは、妻がOL(死語?)の時に渋谷のディズニーショップで

初給料で買ったドナルドダックのぬいぐるみで、今も現役です。

妻があまりにもギンちゃんをかわいがるので、当時一緒に暮らしていた

妻の母親が妻のことを面白がって「ギンちゃんの親分」と呼んでいたとのことでした。

というわけで、その時から妻のことをオヤブンと呼ぶことになりました。


最初は呼びづらかったオヤブンですが、慣れてくると呼びやすくて、

すっかり定着していきました。


「へっへっへ、今月のお小遣いピンチなんでヤンスよ。

 五千円くらい、なんとかなりやせんかねえ?

 オヤビン?」


「カシラ!

 言いつけ通り風呂沸かしておきやす!

 ポチっとな!」

 
のような応用系まで飛び出す始末でしたが、だんだん本当に子分のように

なってきたので、応用系はやめることにしました。


いつだったか豊洲のららぽーとに買い物に行った時のことです。

仕事が終わって豊洲駅に着いたので、先に来ていた妻と連絡を取ろうと、

歩きながらスマホ(マナー悪くてすみません)で電話しました。

妻が出たので、


「あ、オヤブン?」


と言ったら、前を歩いていた親子連れがビクッとして険しい顔で後ろを

振り返ってきました。


ダーク系のスーツを着た短髪の男が電話でオヤブンに電話しているわけですから、

さぞ驚いたことと思います。


あの時は驚かしてすみませんでした。

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