ブラックかもしれない!?② -あるアロマショップ- 前編

ブラックな職場


ブラックかもしれない有料老人ホームで介護士をしていた僕は、

いろいろあって辞めるという決断をしました。

それに至るまでの経緯については、前回の記事をご覧ください。


次の仕事をどうするかについてはものすごく悩みました。


あんな出来事があった後なので、もう介護士はやりたくない。

自分が他にやりたい仕事は何だろうか?

やり甲斐があって、みんなに喜ばれるような仕事…。

う~ん…そうだ!

アロマだ!

アロマテラピーを仕事にできたら最高じゃないか!


自衛官時代にアロマテラピー1級を取得し、退官後はスクールに通って

インストラクターの資格を取るほど好きなアロマテラピーを仕事にする、

それはとても魅力的なことでした。

老人ホームでも、レクリエーションで何回か香水作りなどのワークショップを

やりましたが、入居者様やそのご家族にもとても好評でした。


当時、その有料老人ホームに後輩として入ってきて、

後に付き合うことになった当時の妻にも相談しました。


「たけちゃんにはアロマとても合ってると思うよ。

 とりあえず求人探してみたら?

 あたしも一緒に探してあげるから」


早速、ネットでアロマの求人を検索すると、何件かヒットしました。

一つ一つ見ていきましたが、どれも女性限定の募集ばかり。


そうなのです。

今はどうなのかわかりませんが、15年前の当時はアロマをやりたい、学びたいという男性は

珍しかったようで、ショップもスクールも基本は女性のみの募集しかしていませんでした。


僕が通っていたスクールもその例外ではなく、当初は女性のみの生徒しか

募集していませんでした。

一度入学を断られましたが、どうしても諦めきれなかった僕は再度入学志願をしてみました。

すると、校長先生が僕の熱意を買ってくれて、アロマセラピスト養成講座ではなく、

アロマ心理学講座を勧めてくれました。

心理学講座ならトリートメント(マッサージ)が無く、体に直接触ることが無いので、

男性の僕でも女性に混じって学習は可能だろうということでした。


そして僕は無事に入学することができ、心理学講座も無事に修了しました。

しかも、僕が熱心に勉強しているのを見て、次の年からはアロマセラピスト講座も

受講させてくれることになりました。


人生何が起こるかわからない!

とりあえずやってみるもんだ!


目を通した求人の一つに、女性限定の断り書きが無いものがありました。

そこは数ヶ月後にオープンを予定していて、初期スタッフを追加で1名募集していました。

ショップとしてアロマ商品を販売する他、トリートメント、ワークショップ、

コンサルティングなど、幅広い業務形態で、とてもやり甲斐がありそうに思えました。

これだと思い、お問い合わせフォームで男性の応募は可能かどうか問い合わせたところ、

男性の応募もOKという返事をいただきました。


早速、履歴書を送って応募してみたところ、すぐに面接の連絡が来ました。

僕が老人ホームでアロマのレクリエーションをしていたことに関心を持ってもらえたようで、

レクリエーションで使っていた資料をぜひ持ってきてほしいとのことでした。

さらに知り合いのつてで、一度だけですが保険代理店でそこのお客さん相手にもワークショップを

やっていたことも大きなポイントだったようで、その時のこともぜひ詳しく聞かせて欲しいと

かなりの好感触でした。


これはもう、是が非でもここに就職せねば!


面接の場所はとあるマンションの一室。

面接官はショップの店長兼社長、前職は大きな所で仕事をしていて、

退職してアロマの世界で独立したバリバリのキャリアウーマンです。

そのマンションの一室は、彼女の自宅兼事務所でした。

意気揚々と面接に臨んだ僕は、自分を目一杯アピールしました。

その結果、見事採用を勝ち取ることができました。

妻にもすぐに報告しました。


「やったよコロブン!採用されたよ!」

「すごーいすごーい!たけちゃんのアロマセラピストになる夢が叶ったね!」

「そうだね!アロマセラピスト…なんていい響きだ!」

「ねえねえ、就職のお祝いに何か買ってあげる。何がいい?」

「う~ん…やっぱり本がいいかなあ」

「じゃあこれから本屋さんへ行こう!」


そうして就職祝いとして妻に買ってもらった本が、

リチャード・ガーバーの『バイブレーショナル・メディスン』です。

鍼灸やアロマテラピーなどの伝統療法・代替療法を考察する本で、

僕がフラワーエッセンスやホメオパシーにも興味を持つきっかけになった素晴らしい本で、

もちろん今でも大切に持っています。


自衛官を辞めてから苦労の連続でしたが、ようやく全てが報われたように思えました。

しかし、世の中はそんなに甘いものではありませんでした。

もう二度とアロマテラピーなどやりたくないと思わせた、そんな最悪な結末が

待っていようとはこの時夢にも思わなかったのでした…。

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